2012年8月18日土曜日

デンマルク国の話、その10

しかしダルガスの熱心はこれがためにくじけませんでした。彼は天然はまた彼にこの難問題をも解決してくれることと確信しました。ゆえに彼はさらに研究を続けました。しかして彼の頭脳あたまにフト浮び出ましたことはアルプス産の小樅こもみでありました。もしこれを移植したらばいかんと彼は思いました。しかしてこれを取りきたりてノルウェー産の樅のあいだに植えましたときに、奇なるかな、両種の樅は相いならんで生長し、年を経るも枯れなかったのであります。ここにおいて大問題はけました。ユトランドの荒野に始めて緑の野を見ることができました。緑は希望の色であります。ダルガスの希望、デンマークの希望、その民二百五十万の希望は実際に現われました。

 しかし問題はいまだまったく釈けませんでした。緑のはできましたが、緑のはできませんでした。ユトランドの荒地より建築用の木材をも伐り得んとのダルガスの野心的欲望は事実となりて現われませんでした。もみはある程度まで成長して、それで成長を止めました、その枯死かれることはアルプス産の小樅こもみ併植へいしょくをもってふせぎ得ましたけれども、その永久の成長はこれによって成就とげられませんでした。「ダルガスよ、汝の預言せし材木を与えよ」といいてデンマークの農夫らは彼に迫りました。あたかもエジプトよりのがれ出でしイスラエルの民が一部の失敗のゆえをもってモーセを責めたと同然でありました。しかし神はモーセの祈願ねがいを聴きたまいしがごとくにダルガスの心の叫びをも聴きたまいました。黙示は今度は彼にのぞまずして彼の子に臨みました、彼の長男をフレデリック・ダルガスといいました。彼は父のたちを受けて善き植物学者でありました。彼はもみの成長について大なる発見をなしました。

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