2012年8月1日水曜日

内村鑑三の「聖書の読方」その6

彼(イエス)はヤコブの家をかぎりなく支配すべく又その国終ることあらざるべし
とある言は確かにメシヤ的即ち来世的の言である(一章三十三節)、神の言葉として是は勿論追従の言葉ではない、又比喩的に解釈せらるべきものではない、何時か事実となりて現わるべき言葉である、然るに今時いまは 如何と云うに、イエスの死後千九百年後の今日、彼は猶太人全体に斥けられこそすれ「ヤコブの家を窮なく支配す」と云いて猶太人の王ではないのである、又 「その国終ること有らざるべし」とあるも実はキリストの国と称すべき者は今日と雖も未だ一もないのである、基督教国基督教会孰れも皆な名のみのキリストの 国である、真実のキリストは彼等に由てけがされ彼等の斥くる所となりつつあるのである、依て知る路加伝冒頭の此一言も亦未来を語る言として読むべきものであることを、イエスは第二十世紀の今日今猶お顕わるべきものである、彼の国は今猶おきたるべき者である、而して其の終に臨るや、此世の国と異なり百年や千年で終るべき者ではない、是は文字通り永遠に継続つづくべき者である、而して信者は忍んで其建設を待望む者である。

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